父の遺言
パソコンは、実はけっこうお金がかかる道具です。
新しい機種が出たら、今使っているものはなんだか古くなったような気がしてしまうし、ソフトも新しいバージョンが発売されると、自分のパソコンにもすぐに導入して使ってみたくなります。
父の生前、病床を見舞ったときのことです。私が、まだ使えるワープロを、新しいパソコンに乗りかえた、と母から情報を得ていたのでしょうか、病室に入ってしばらくすると、「また新しいの、買ったそうだな」とぽつり。少し浪費癖のある私を叱るように、「あまり無駄遣いをするな。人間はいつ気がつくか、それが大事だ。」と、いきなりお説教。せっかくお見舞いにきたのに、と思いつつも、相手は病人なので、素直に「はい」とうなずいたものでした。(いつもなら、必ず口論になっていたところでした。)まだ、私は教壇に立っており、この仕事とは無縁だった頃の話です。
それからしばらくして、父は昏睡状態になり、そのまま他界しました。私にとっては、「あまり無駄遣いするなよ」の一言は、父の遺言になってしまいました。
この仕事に就いてから、新しいパソコン、新しいソフトの導入を考えるたびに、まず、心の中で「仕事のためなんだから、お父さん、いいよね?」と父に許しを請う癖がついてしまいました。
それでも、やっぱり節約は美徳。パソコンは、メモリやハードディスクの増設、という形で、本体すべてを買い換えなくてすむやり方があります。ソフトの中にはフリーソフトといって、無料で配布されているものの中にも役立つものはけっこうたくさんあります。
ただ、お金の節約、といっても、必要なソフトを使うにはやはり身銭はきらねばなりません。CDがコピーできるようになったから、といって、人から借りたソフトをコピーしたりして使うのは違法です。結局、高い罰金を支払うことになったりして、損をすることになります。
高い道具、お金のかかる道具だからこそ、必要なお金は出し惜しみせず、いつまでも大切につきあう。これは大事なことです。
実は、我が家には、4年前に買ったノートパソコンがあり、そろそろ新しいものが欲しいな、と思い始めたところでした。でもちょっと思いとどまって、有効な利用のしかたをもう一度考えたいと思います。
「無駄遣いするなよ」なんといっても、父の遺言ですから。
今日は、父の日。